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保護費計算の事例

先日の研修で使った事例です。あくまでも架空の事例です。
資産は考慮していません。また研修のときは冬季加算も考慮していません。
就労収入に伴う必要経費の厳密な扱い方についても説明はしていません。
あくまで基本的な理解のために簡便化した事例とご理解ください。
実際の研修では「生活保護基準額表」もお配りして、参加したみなさんに生活保護担当のケースワーカーになっていただき、計算をしてもらいます。

うちの地元は生活保護で言う「3級地の1」という地域になります。
(23区などの都会は「1級地の1」で、「3級地の2」までの6段階です。数字が大きくなるほど安くなります。物価に対応しているということになっています。)

答えを先に書いてしまうと、どの事例も生活保護が必要な状態です。

事例3は(へ)のところがマイナスになり(3級地の1の場合約2000円)、生活扶助と住宅扶助だけで最低生活費を考えると収入充当額が最低生活費を上回り、「生活保護にならないのかな?」と思われるように作ってあります。

しかし一ヶ月のこのご家族の介護サービスの医療の自己負担額を、その金額ではまかなえませんよね。
この場合、いわゆる保護費は支給されないけれど医療扶助と介護扶助が現物給付される生活保護、というのもあります。というのを理解していただくために作ってある事例です。


別紙 Ⅴ 生活保護が必要かどうか、計算してみよう。

事例1 75歳、一人暮らしのAさん。無年金。その他の収入なし。
民間の賃貸アパート(家賃2万円)に居住。

最低生活費の計算
     生活扶助
       1類(ア)            円
       2類(イ)            円
 (ア+イ)小計(ウ)            円
    住宅扶助(エ)            円
(ウ+エ)最低生活費=(オ)       円+(医療扶助+介護扶助)

収入充当額の計算
   収入充当額=(カ)          円
  
☆最低生活費(オ)-収入充当額(カ)=(キ)            円が毎月の支給額になります。


事例2 高齢夫婦二人暮し世帯のBさん、Cさん。年金あり。
世帯主Bさん。男性。66歳。年金収入70,000円(2ヶ月で)
妻Cさん。女性。67歳。年金収入50,000円(2ヶ月で)
市営住宅(家賃4,000円)に居住。年金以外の収入はない。

最低生活費の計算
生活扶助
       1類(ク)            円(Bさんの分)
         (ケ)            円(Cさんの分)
       2類(コ)            円(二人分)
(ク+ケ+コ)小計(サ)            円
住宅扶助(シ)            円
(サ+シ)最低生活費=(ス)          円+(医療扶助+介護扶助)

  収入充当額の計算
   Bさんの収入=(セ)           円  
   Cさんの収入=(ソ)           円
世帯の収入充当額=(タ)         円
   (年金・手当・仕送りについては月額に換算して収入充当額とします。)
 
  ☆最低生活費-収入充当額=(チ)      円が毎月の支給額になります。


事例3 応用編

世帯主 Dさん 70歳 女性 要介護2 通院中 介護保険サービス利用中。年金収入あり(100,000円 2ヶ月で)

長男 Eさん 40歳 男性 精神保健福祉手帳3級 通院中 パートタイマーとして就労中。手取り収入12万円
(総支給額13万円 必要経費1万円) 家賃5万円の民間アパートに居住。

最低生活費の計算
生活扶助
     1類(ツ)        円(Dさん)
       (テ)        円(Eさん)
     2類(ト)        円(2人分)
     小計(ナ)        円 
   住宅扶助(ニ)        円
  
最低生活費=(ヌ)       円+(医療扶助+介護扶助)

 収入充当額の計算
Dさんの分(ネ)       円  
 
※Eさんの就労収入は、手取り収入額がそのまま収入充当額となるのではなく、「総支給額」-「基礎控除額」-「必要経費」=「収入充当額」となります。
(ノ)    円-25,230円-(ハ)    円=(ヒ)     円

  収入充当額=(ネ)+(ヒ)=(フ)        円  

最低生活費-収入充当額=(へ)          円


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「介護護支援専門員として知っておきたい生活保護の基礎知識」

先日の地元のケアマネ協議会の研修会で講師をしてきました。

時間配分を失敗したりして、お伝えし切れなかったこともありました。
自分自身の復習もかねてお伝えしたかったことをまとめておきます。


・最低限必要な衣食住をはじめとする生活の基本的ニーズの充足は権利擁護活動の中核。
・生活保護を受けている世帯のうち約40%が高齢者世帯。
・生活保護基準を下回る生活をしながら、実際に生活保護を受給している人はおおよそ30%程度と推測できる。(あくまで推測。生活保護の捕捉率の把握は確かに難しい。)
・ということは、高齢者世帯で、生活保護基準を下回る生活をしながら、生活保護を受給していない人がかなりいるはず。
・高齢者の生活にかかわる仕事をしている介護支援専門員は、そのことに気づける(気づかなければいけない)立場で仕事をしている。


・社会保障は基本的に国家責任。
・こんなに社会福祉も社会保険もこんなに制度が整備されているのに、なぜ生活保護が存在するのか。
・日本の社会保障制度は「穴だらけ」であるのが現実。特に労働(雇用や賃金)、住宅の分野。
・生活保護は最後のセーフティネット。だからこそ重要。
・「生活保護基準の生活」<「社会保険給付による生活」<「最低賃金による生活」になってないことの弊害。

Ⅲ Ⅳ
・必要なときに生活保護を受けるのは国民の権利。そして困窮した原因は問わない。
・生活保護制度を理解するのには「補足性の原理(法第4条)」と「世帯単位の原則(第10条)」をおさえよう。

Ⅴ(具体的な事例に基づいて、生活保護になるかどうか、なったらどれぐらいの給付があるのか研修参加者の皆さんに計算していただきます。資料としては事例だけ載せておきます。金額は地域によってことなるので。)
・実際に計算をしてもらうと、「生活保護っていくらもらえるの」という一見簡単な質問に答えるのが難しいことをりかいしていただけます。

本当は生保CWが普段どんな仕事をしていて、ケアマネさんがどのようにしたら生保CWをチームに巻き込めるか、生保CWもケアマネさんと同じような悩みを抱えていることなど、生々しいお話もしたかったのですが、時間切れでした。 

====以下少しいじってありますが、当日の資料です。====

「介護護支援専門員として知っておきたい生活保護の基礎知識」
~権利擁護の担い手として~

【研修のねらい】
・権利擁護の担い手としての介護支援専門員の機能・役割の再確認
 (なぜ介護支援専門員に生活保護の基礎知識が必要なのか?)
・日本の社会保障制度の概要を理解し、生活保護制度の基礎知識を理解する。

Ⅰ 権利擁護の担い手としての介護支援専門員の機能と役割
Ⅱ 日本の社会保障制度の概要
Ⅲ 生活保護制度の原理原則と基礎知識
Ⅳ 生活保護の受給要件(どのような場合に受給できるのか)
Ⅴ 生活保護が必要かどうか、計算してみよう(資料略)
Ⅵ 生活保護申請から決定までの流れ
Ⅶ まとめ


Ⅰ 権利擁護の担い手としての介護支援専門員の機能と役割

【2000年(H12年)4月1日 介護保険制度がスタート】
  介護支援専門員の機能と役割
  (1)プランニング機能
  (2)マネジメント機能
  (3)調整機能
  (4)相談機能
  (5)権利擁護機能

【権利擁護によって「擁護」するものは?】
「『権利擁護』とは、援助の本質につながる深く重い概念です。各種の虐待や経済的被害、機会の剥奪や不当な扱い、差別や中傷等から本人を守るという権利侵害からの保護、また人として生活するのに最低限必要な衣食住をはじめとする生活の基本的ニーズの充足は、いうまでもなく権利擁護活動の中核をなすものです。これらを『狭義の権利擁護』とするならば、さらにそこから『本人らしい生活』と『本人らしい変化』を支えるという『積極的権利擁護』にまで拡大してとらえることが求められます。」 (四訂 介護支援専門員実務研修テキストP10,11,157,158より)

【生活保護に関する基礎的なデータ】
(全国)世帯類型別被保護世帯数の構成比(福祉行政報告例 平成22年9月分概数)
高齢者世帯 母子世帯 障害者世帯 傷病者世帯 その他の世帯
    42.9%    7.8%    11.2%      21.9%     16.2%

生活保護の「捕捉率」(全国推計) 32.1%
 ※平成22年4月9日「生活保護基準未満の低所得世帯数の推計について」
  (H19国民生活基礎調査による推定数値)(厚生労働省 社会・援護局保護課)

※これらの数字からわかることはどんなことでしょう?


Ⅱ 日本の社会保障制度の概要
社会保障ってなんだろうか?(仮に定義してみます)
「社会保障とは、病気・けが・出産・障害・死亡・加齢・失業・離婚などの出来事が原因となって、個人・家族が健康で文化的な生活を送ることが困難となることを防ぎ、あるいは困難となった個人・家族を救い、個人・家族の生活を安定させ、社会全体の安定をはかるために政府または社会が所得移転によって直接現金給付により所得を保障し、あるいは現物給付として医療や介護などの社会サービスを給付すること。」

憲法第25条(生存権規定)
「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」
「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障、及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」

日本の社会保障制度(かつての「社会保障制度審議会」の分類にしたがいました)

1公的扶助≒生活保護
 (旧)生活保護法 S21年 → 全面改正 S25年 (現)生活保護法

2社会福祉
児童福祉法 S22年
身体障害者福祉法 S24年
知的障害者福祉法 S35年
老人福祉法 S38年
母子及び寡婦福祉法 S39年
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)H7年
(精神衛生法 S25年)
障害者自立支援法 平成17年

3社会保険
医療保険(国民健康保険・健康保険・共済保険・後期高齢者医療制度)
年金保険(国民年金・厚生年金・共済年金 老齢年金・障害年金・遺族年金)
介護保険(H12年)
労働保険(労災保険+雇用保険)

4公衆衛生および医療

5老人保健(H20年より後期高齢者医療制度に)

本来は、
【生活保護基準の生活】 < 【社会保険給付による生活】 < 【最低賃金による生活】
となるべき。


Ⅲ 生活保護制度の原理原則と基礎知識
【目的】 「最低限度の生活の保障」と「自立の助長」(法第1条)

【原理原則】4つの原理と4つの原則
1 国家責任の原理(憲法・法第1条)
生活保護は憲法25条の規定に基づく国家責任による最低生活保障

2 無差別平等の原理(法第2条)
国民は要件を満たす限り無差別平等に保護を受給できる。困窮に陥った理由は問われない。また必要な保護を請求する権利が国民にある。

3 最低生活保障の原理(法第3条)
生活保護で保障される生活水準は、憲法が定める「健康で文化的な最低限度の生活」を維持できるものでなければならない。

4 補足性の原理 (法第4条)
生活に困窮するものがあらゆるものを活用した上で、なお最低生活の維持が困難なときに保護を受給できる。
→保護の要件
→生活保護制度は社会保障の最後のセーフティーネット

1 申請保護の原則(法第7条) (例外 職権保護)
保護の適用は当事者からの申請行為を前提としている。

2 基準および程度の原則(法第8条)
厚生労働大臣が定めた基準に不足する程度で保護を実施する。

3 必要即応の原則(法第9条)
要保護者の年齢や健康状態など個別の事情に応じて保護を実施する。

4 世帯単位の原則(法第10条) (例外 世帯分離)
保護の要否や程度は原則として世帯を単位として判定する。

【扶助の種類】 扶助の種類は8種類
いずれも、最低生活の維持に必要な必要最小限度の程度で支給される。
生活扶助(食費・被服費・水光熱費)
教育扶助(義務教育にかかわる経費)
住宅扶助(家賃。基準額の範囲内で実額。持ち家の場合は支給しない)
医療扶助(ほぼ国民健康保険の範囲内で現物給付)
介護扶助(介護保険の範囲内で現物給付)
出産扶助・生業扶助・葬祭扶助

【費用の負担】国4分の3 市4分の1(居住地保護の場合)「法定受託事務」


Ⅳ 生活保護の受給要件(どのような場合に受給できるのか)

(保護の補足性)
第4条 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
2 民法(明治29年法律第89号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
3 前2項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。

生活保護は原則として世帯単位でその適用が判断されます。(世帯単位の原則)
そして、保護の補足性から生活保護の受給要件として以下のことが求められます。
・(稼働)能力の活用が図られていること。
・資産の活用が図られていること。
・他法他施策の活用が図られていること。
・扶養義務者からの援助が保護よりも優先される。

 活用できるものをすべて活用して(=最大限の努力をして)、それでもなお、最低生活の維持が困難と福祉事務所が判断する場合、生活保護を受けることができます。
 具体的に最低生活が維持できるかどうかは、国が決めた、「最低生活費」(その世帯の家族の人数、年齢、障害の程度等によって定めた、1ヶ月の生活費)と、最大限努力をして、その世帯が1ヶ月に得られる「収入充当額」(給料や手当・年金、仕送りの合計)とを比較して判断します。

 生活保護開始時に保有が認められる資産は、現金にしてその世帯の1か月分の最低生活費が目安となります。
 その他の現金以外の資産は基本的には処分対象となります。ただし例えば本人たちが居住している家屋や土地など、現に生活の維持に活用されており、処分するより保有していたほうがよいものなどについては保有を容認することもあります。

 生活保護を申請すると、ミーンズテスト(資産調査)、インカムテスト(収入調査)、扶養義務者に対する調査が実施されるため、必然的にスティグマ(烙印、刻印。不名誉や屈辱の徴。汚点、汚名)を伴います。
そのことにより、生活保護の相談や申請をためらう人がいるのも事実です。


Ⅴ 生活保護が必要かどうか、計算してみよう → 別記事にします(保護費計算の事例)


Ⅵ 生活保護申請から決定までの流れ
1 相談
 ご本人に福祉事務所に来ていただき、どのように生活にお困りかをお話いただきます。生活保護制度の説明、他に利用できる制度がないかの検討を行います。

2 申請
 相談の結果、ご本人に申請意思がある場合、申請手続きをしていただきます。(後日生活保護の適用が決定された場合、原則として申請日からの適用となります。介護保険と同じです。)
 資料(保険証、預金通帳、年金手帳、年金証書、障害者手帳など)を用意していただくと、申請後の調査がスムーズに進みます。

3 調査
 ご自宅を訪問し面接調査を行います。生活保護申請にいたった経過、これまでの生活歴を聴取し、活用可能な資産、制度、扶養義務者などがないか検討します。
 また金融機関などにあてて文書で資産の状況を調査します。
 
4 要否判定
 調査の結果把握したその世帯の「収入・資産」と国の定めた「最低生活費」とを比較し、保護の要否を決定します。

5 程度の決定
 要否判定の結果、保護が必要と判断された場合、どの種類の保護が必要か、どの程度の保護が必要かを、国の定めた基準により決定します。文書により申請者に決定の内容を通知します。
 保護の開始が決まった場合には、被保護者としての権利と義務についての説明が行われます。

6 相談援助
 保護受給中は定期的に担当のケースワーカーが家庭訪問し、相談に対応し、世帯に必要な指導や指示を行います。訪問の頻度は格付けによって、月に1回から半年(あるいは1年)に1回までさまざまです。

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